国内で主に生産されているパッションフルーツはPassiflora edulisという赤紫の玉です。
糖度が高く皮からも香りが出るため生食に向いています。
私達が加工用に作っているのはPassiflora edulis f. flavicarpaという黄色く二回りほど大きな実です。
原料果実は20数年前にブラジルから三分一さんという方が10種ほどのパッションの種を持ち込み、島民に配布した物を優良種の選抜という形で、毎回播種して増やしています。
加工時に一つ一つ包丁でカットするため、香りや熟度が良い物が判別でき、その種を播種することで良質の苗を作ります。
そのため苗は全てこちらから提供したものを使うという契約になっています。
知人の伝手を頼ってフィリピンミンダナオ島の中央部Malaybalay近郊でテストを開始。
成績は驚くほどよかったので、一次加工施設を整備し本格的に契約農家を集め各所で説明会を開始。地元のスタッフ達と山の中を飛び回る日が続きました。
栽培件数も順調に増え50軒を超えます。
ところが、有機栽培のため万が一のことを考え、1ヵ所の規模を50a以上にしないで他の畑との距離を100mほど離すように指導していたのですが、成績が非常に良かったので地元の有志が1ヶ所に4haもの栽培を始めてしまい、そこにウイルスが発生してしまいます。
当時は今のように携帯やネット環境が発達しておらず、後手後手の連絡で周辺地域に蔓延してしまい、全て焼き尽くしほぼ全滅状態になりました。
それでも前年のピューレの蓄えが数十㌧有ったため、何とか現地での事業を継続します。
次に起こったのが周辺地域での土地がらみの紛争で、直接の被害は無かったのですが加工施設の土地のオーナーが紛争の当事者で、関係者にも犠牲が出始めさすがに危険を感じて設備の移動を検討。
折良くミンダナオで2番目の急成長を続けるCagayan de Oro郊外に、休眠中のジュース工場が売りに出ており、購入。と言っても容易ではなく、アンダーマネーが役所の窓口や警官でさえも催促されるような国で、売り主や税務署などと日本では信じられないようなゴタゴタが数年続きましたが、何とか地元スタッフが頑張ってくれ生産地域の新規改革から一次加工まで先の見通しが立つようになりました。
ミンダナオはフィリピン国内で最もフルーツの生産に適した所と云われ、国でも推奨しています。ただ、フラットで条件の良い良質の土地は、殆どがデルモンテやドール・ネスレ等大企業が利用しており、私達の生産地は主に今までココヤシなどで辛うじて生活を立てていた貧困地区が多く、パッションを栽培するための杭やコードなど初期投資は前借りすることになります。
熱帯のジャングルでは病害虫も多く、熱帯で有機栽培など無理だと地元の専門家にも云われましたが、現地の昔からの知恵として、マメ科のマドレカカオ等は害虫の忌避効果が有り、幾つかの植物や海草などを混ぜ発酵液作る農家も有り、私達も勉強になる事があります。
地元スタッフには「えひめai」の製造方法を教えて、定期的に散布させており一定の効果も見られます。
この黄玉種は沖縄では人工授粉しなければ殆ど実がならないのですが、現地ではカーペンタービーという大型の熊蜂の仲間が花に集まってくるため受粉の手間が省けます。ココナッツを拾うだけの農業に慣れている現地の農家に、開花期には毎日畑へ行き人工授粉を強制させれば多分長続きはしなかったと思います。
収穫は完熟して落ちた物。パッションは完熟して土に落ちるとそこから傷み始めます。ただ、外面的には傷んだものでも割ってみると香り糖度共に優れたものが多く、農家がはじいていたものも買い取るようにしているため、喜ばれているようです。
現在は作りたい農家が多いようで契約農家は順番待ち。ただ以前は勝手に種を蒔いて増殖し親戚などに配り、収穫時期に見知らぬ人が担いで持ってくることもあったので、この整理も重要です。
この項続く