私達の挑戦は30年前に始まりました。
屋久島の樹林の中の小さな管理小屋に、台風のために3日間閉じ込められ台風の通過後に庭一面に落ちていた赤紫色の小さな果実。割って中の果汁を種ごと口に流し込んだときの今まで味わったことの無い甘さを伴った酸味と芳醇な香り。パッションフルーツの虜になった瞬間です。
その後事あるごとにパッションを味わってきたのですが、加工品になると全く別物になってしまうことに落胆し続け「このフルーツの本来の味・香りを知ってもらうには?」がスタートでした。
台湾やスリランカ等海外の加工施設を訪ね、そのヒントが解り始めこれは原料の栽培から一次加工、最終加工まで一貫してやらなければと決断。その結果ようやく納得できる味が出来るようになりました。お陰様で口コミでの評価も広がりリピーターも多くなりましたが、味に関しては自己満足の範囲を出ていません。
初エントリーは2017年
川平ファームの製品は、あくまでも嗜好品ですからこの味をどう評価されるのかを知りたいと思い、5年前に当時のiTQi(国際味覚審査機構)の優秀味覚賞にエントリーすることになりました。
iTQiは食品のミシュランとも云われ食品の「美味しさ」と「品質」をヨーロッパの調理師・ソムリエ協会所属の 200 人を超える著名なシェフとソムリエで目隠し審査されます。
初回は主力製品のパッションフルーツジュース100%と加糖タイプのパッションフルーツドリンクの2品を出品。★が一つでも付けばと思っていましたが、パッションフルーツジュース100%が★★、パッションフルーツドリンクが★★★を受賞。
思わぬ好成績でしたが、パッションフルーツジュース100%も自信があったのですが、希釈せずに審査されたため酸っぱ過ぎたのかなと反省。この年娘二人がベルギーブリュッセルでの授賞式に参加。
2年目はパッションフルーツジャムで勝負
2年目は100%に替えパッションフルーツジャムとパッションフルーツドリンクを出品、これは共に三ツ星を受賞しました。
パッションの加工素材のピューレは、原料のフルーツの栽培期間の気象条件や熟度などにより、微妙に味や香りの変化があります。そのためこのエントリーで三ツ星を受賞し続けることは至難の業と云われています。
3年連続受賞でクリスタル味覚賞受賞、いざベルギーへ
3年目は2年目と同様にジャムとドリンクでエントリー、出品するときにスタッフ一同で製造日の異なる製品をテイストし選別した物を送ります。
ドリンクが三ツ星を獲得し3年連続三ツ星のクリスタル賞を受賞、ジャムも高得点で三ツ星を受賞したという知らせが届きました。
プレステージ賞と云うことで家族の薦めで私と長女が授賞式に出席することに。
ステージに上がると云うことで生まれて初めてタキシードに蝶ネクタイを準備。石垣→沖縄→関空→オランダ→ベルギーと乗り継ぎブリュッセルへ。
ヨーロッパのパッション製品をめぐる
チョコレートの本場ベルギーではチョコレートとパッションフルーツの組み合わせた製品が多く見られます。早速有名なチョコレートショップ廻り、パッションと組み合わせたチョコレートを片っ端からテイスト。大手の製品ではやはりパッション本来の味が出ている物は有りませんでしたが、手作りの話題店ではパッションを活かした製品が見られました。授賞式まで数日余裕があったので高速鉄道のユーロスターでパリへ。ルーブル美術館を見た後ジャム(コンフィチュール)の本場でやはり有名なジャム屋さん廻り。ただ、パッションフルーツのジャムは見当たりません。
以前パリの「沖縄県フェア」にジャムを出品したときにソムリエ世界チャンピオン、オリヴィエ・ヴィッシェ氏に絶賛され、予約を受けているという「ワークショップ・イセ」を訪問。パリでの取扱の話も決まりました。でも、価格が15ユーロ(2000円)だったのにはビックリ。日本の3倍です!!。お店の方の話ではジャム製品の豊富なフランスでも本当に評価される商品で、価格は高いが、品質が良く、味をみれば買うそうです。
タキシードで挑んだ授賞式
ブリュッセルに戻って授賞式本番。会場は硝子の天井を持つヨーロッパ最古のアーケード「ギャルリーサンチュベール」の中のCinema Galeries。アーケードの路上にも会場が設営されています。
会場に入ると世界中のメーカーからの参加者で過密状態。私達は初回から三ツ星が続いたので余り意識してなかったのですが、一ツ星を受けたメーカーでも大喜びでスタッフを連れ参加している事を知り、この三ツ星受賞の意味を改めて感じました。
三ツ星を7回受賞すると与えられるダイヤモンド賞、3回連続でクリスタル賞が授与されます。
KABIRAFARMが呼ばれると壇上に上がりバックのスクリーンに大写しされた受賞製品と共に盛大な拍手で迎えられます。オランダ・ベルギーは世界で最も背の高い国。見上げるような主催者からとても重いクリスタルのトロフィーを受け取り、最後に参加者全員で賞状を差し上げ大声で歓喜の舞。
授賞式後に会場の内外に設けられた数カ所のスペースで、著名な審査員との記念撮影会が催されました。前年に授賞式に参加した長女を覚えている審査員もいて、和やかな雰囲気に内に授賞式は終了しました。
私達の製品は立ちあげ当時は石垣島の原料のみを使った事に拘っていましたが、毎年襲来する台風などの影響で現在はフィリピンのミンダナオ島に現地法人を作り種蒔きから加工まで一貫した管理の下にこの味を作り出すことに成功しました。
ただ、ともすれば地産地消が唱われ国産素材が尊ばれる世風になっていますが、一歩外へ出れば素材の原産地の問題は全く無く、味と品質が最重要と云うことを身にしみて感じました。
4年、5年と三ツ星受賞は続きます
翌年もこの二点は三ツ星を獲得、ジャムもクリスタル賞を授与。この小さな加工場で殆ど手作業に近い製造方法で味・品質を維持して行くことは関係するスタッフ皆の力です。
コロナ禍で色々と制限がありますが、パッションフルーツという素晴らしい香りと優れた酸味を持ったこのフルーツの本来の味を、もっと多くの人々に伝えたいと思っています。
今年も審査の時期になりました。
速報ではパッションフルーツドリンク5年連続三ツ星、パッションフルーツジャム4年連続三ツ星の知らせが入りました。
挑戦はこれからも続きます。